1Apr
こんにちは。ロングステイアドバイザーで税理士の西浦です。
平成27年3月31日に平成27年度税制改正関連法案が成立したことにより、出国税(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)が創設されました。
今日はその概要を見てみましょう。
1.はじめに
出国税とは、平成27年7月1日以降に日本居住者が国外転出する際に有する有価証券等について、譲渡等をしたものとみなして所得税が課税されるものです。
2.対象者
海外転出時に次の要件を満たす日本居住者
① 有価証券等(未上場株式・外国法人株式も含む)や未決済デリバティブ取引等(FX・先物等)の含み損益の合計額が1億円以上を有する。
② 国外転出日前10年間のうち5年を超えて国内に住所等を有する。
3.申告時期等の課税関係
① 納税管理人の届出をした場合
国外転出日の時価で譲渡・決済したものとみなして計算した所得に課税する。申告・納付期限は翌年3月15日。
② ①以外の場合
国外転出日の3月前の日の時価で譲渡・決済したとみなして計算した所得に課税する。申告・納付期限は国外転出日。
4.課税の取消し(仮装・隠蔽に基づいて計算した所得は除く)
国外転出後5年(申請により10年)以内に帰国し、次の要件を満たせば課税の取消し(納付した出国税の還付)ができる。
① 国外転出時に申告した有価証券等や未決済デリバティブ取引等を譲渡・決済せず引き続き保有
② 帰国日から4月以内に更正の請求をする。
5.納税の猶予
次の要件を満たせば、納税猶予の適用がある。
① 納税猶予の適用を受ける旨の記載をした確定申告書を提出期限までに提出
② 出国税の額に相当する担保を提供し、かつ、納税管理人の届出を行う。
③ 納税猶予期間中、毎年末現在の有価証券等や未決済デリバティブ取引等の所有に関する届出書を翌年3月15日までに提出
6.その他
① 納税猶予期限までに有価証券等の譲渡・決済した場合、その譲渡・決済日の4月後が納税猶予期限となる。
② ①の場合または納税猶予期間満了の場合、納税猶予を受けていた出国税の納付に加え利子税(現行:上限年7.3%)の納税も必要となる。
7.贈与・相続等の場合
平成27年7月1日以降に、出国税の課税対象者が有する有価証券等や未決済デリバティブ取引等が贈与・相続等により非居住者に移転した場合は、その贈与・相続等の時において出国税の適用があります。
この様に、出国税は未実現の所得に対して課税するものです。
その上、納税猶予の制度があるので(担保は提供しなければなりませんが)、出国税の課税対象者が5年または10年以内に帰国する予定で国外転出する場合は、納税猶予を適用して帰国後に取消し手続を行うという流れが一般的になるのではないでしょうか。
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